下田町遺跡は和田吉野川と荒川が合流する地点に位置し、両河川によって形成された氾濫原の自然堤防上に立地しています。 これまでの調査で発見された遺構は、竪穴住居跡163軒、掘立柱建物跡30棟、方形周溝墓9基、井戸跡328基、溝跡601条、道路状遺構2条、土壙586基があります。 弥生時代から中世までの複合遺跡で、主体を占めるのは古墳時代前期から後期、平安時代にわたる集落です。 これらの集落は、低地に面した小高い地形に立地していたため、連綿と人々が生活の場にしていたものと考えられます。
今回の調査で特筆すべきは、奈良時代の井戸から木製の壺鐙(つぼあぶみ)が発見されたことです。鐙とは馬に乗るときに足をかける道具ですが、 今回発見された壺鐙は、表面に黒漆(くろうるし)が塗られた優雅な形のもので、たいへん珍しく貴重な資料と言えましょう。
壺鐙のほかに注目される遺物としては、刻骨(こっこつ/古墳時代前期)、子持勾玉(こもちまがたま/古墳時代末)、 瓦塔(がとう/奈良時代)、合子型香炉(ごうすがたこうろ/平安時代)、 「占部豊川」と線刻のある紡錘車(ぼうすいしゃ/平安時代)、黒漆塗の鞍(くら/平安時代)、 和鏡(わきょう/中世)などがあげられます。
発掘調査風景
第319号井戸跡(矢印が壺鐙)
黒漆塗りの壺鐙(右の絵のように、足先を差し込んで身体を支えます)