EXCAVATION RESULTS発掘成果
【357集】松原前遺跡

市町村鶴ヶ島市
主な時代縄文・中世・近世
発行年度2008
松原前遺跡は、東武東上線鶴ヶ島駅の北方約800ⅿに所在し、越辺川と入間川に挟まれた入間台地上に位置する。台地は東方に向かって緩やかに傾斜し、調査地点の標高は28~29ⅿである。
発掘調査は、主要地方道川越坂戸毛呂山線のバイパス工事に伴うもので、調査区は底辺14ⅿ、高さ75ⅿほどの細長い三角形状で総面積550㎡という狭い範囲ながら、竪穴住居跡2軒のほか溝1条・土壙26基・ピット9基を検出した。
竪穴住居跡は、何れも縄文時代前期中葉の黒浜式期のもので、同期の土器が遺構の内外から多量に出土した。
土壙・ピットは、遺跡南側の谷部付近に集中して検出されたが、出土遺物がほとんどなく所属時期の特定は難しい。溝跡は、断面V字形で調査区北端で東に緩くカーブする状況が認められた。出土遺物より江戸時代後期に比定される。なお、E-3グリッドの立川ローム層上部から旧石器時代の剥片が出土した。
以上、狭い範囲のなかで予想以上の成果が得られたが、特に縄文時代前期中葉の住居跡は市域でも初出であり、当該地域史に貴重な調査例を追加することとなった。