EXCAVATION RESULTS発掘成果
【362集】安養寺古墳群

市町村鴻巣市
主な時代古墳・中世・近世
発行年度2009
安養寺古墳群は、大宮台地北東端から元荒川左岸の自然堤防上に位置する古墳群の総称である。南北約600m、東西約200mと広範囲に分布し、北端に愛宕神社古墳や安養寺南古墳、南端に八幡神社古墳がある。今回の調査区は古墳の空白域で、安養寺古墳群の新たな知見となる遺構・遺物が発見された。
調査の結果、古墳時代前期の方形周溝墓3基・円形周溝墓2基が検出された。3基の方形周溝墓は、周溝が全周するタイプのもので、方台部は後世の撹乱を受けて盛り土は確認されなかった。第1号方形周溝墓は唯一主体部が残存しており、主体部北東辺際からは鉄製の短剣、北西端からはガラス小玉2点が副葬されていた。
さらに周溝からは大型の壺形土器4個体、底部を穿孔した壺形土器6個体、甕形土器2個体、高坏形土器が1個体、ミニチュアの壺形土器が1個体、ミニチュアの鉢形土器が1個体出土した。特に大型壺形土器と底部が穿孔された壺形土器は、周溝の各コーナーに近接した状態で出土しており、土器を用いた葬送儀礼を考える上で参考になる事例である。
底部穿孔の壺形土器は、溝の一部のみが検出された第4号方形周溝墓からも出土した。大部分が調査区域外に広がっているため規模・形状は不明であるが、第1号周溝墓と規模では同等のものと推定される。
方形周溝墓群の北東側に、円形周溝墓が2基検出されている。円形周溝墓はほぼ西縁の形状で、方形周溝墓とは重複せずに方形周溝墓を避けるように配置されていた。円形周溝墓の東側では周溝墓は確認できず、円形周溝墓が墓域の東端にあたるとみられる。
近世以降の遺構は、井戸跡3基、土壙15基・溝跡18条、ピット86基が検出された。一部の土壙からは陶磁器類が出土した。調査区東側では直角に屈曲する溝跡が検出された。溝によって区画された部分から土壙やピットが検出されていることから、道沿いの屋敷地とそれに伴う区画溝や建物跡の一部と考えられる。
縄文時代の遺構は確認されなかったが、縄文時代早期から後期の土器・石器が出土した。