EXCAVATION RESULTS発掘成果
【394集】前谷遺跡

市町村戸田市
主な時代古墳・平安・中近世
発行年度2012
前谷遺跡は、荒川左岸に形成された自然堤防上にあります。調査の結果、古墳時代前期、平安時代、中・近世の遺構や遺物が検出されました。古墳時代前期では、居住施設の一部と考えられる周溝状遺構6基、土壙、井戸跡などが検出され、集落遺跡であることがわかりました。前谷遺跡の集落の特徴は、竪穴住居跡で構成されたものとは異なり、主柱の周りをコの字状に掘り込んだ周溝を伴うことです。竪穴住居跡は家の内側を掘り込むのに対し、周溝状遺構は、家の外側を掘って周堤を構築したと考えられます。こうした建築方法は、主に東海地域に多くみられます。土器は、南関東系のナデ甕や縄文施文を伴う在地の複合口縁壺などが出土しています。また、古墳時代後期から平安時代の土壙や井戸跡も検出されました。古墳時代後期の比企型坏、平安時代の南比企窯跡群や東金子窯跡群で生産された須恵器が出土し、旧入間川などの河川を利用した交流が窺えます。中・近世では、溝跡が検出され、中世に築かれたとされる蕨城との関連が想定されますが、詳細は不明です。