EXCAVATION RESULTS発掘成果

【398集】下野田稲荷原遺跡Ⅱ

下野田稲荷原遺跡Ⅱ

市町村さいたま市

主な時代縄文・古墳・平安・中世

発行年度2013

下野田稲荷原遺跡は、さいたま市緑区大字下野田に所在し、大宮台地鳩ヶ谷支台の東縁部に位置する。これまでに道路建設や土地区画整理により発掘調査が継続的に実施され、弥生時代後期から古墳時代前期と平安時代を中心とした集落跡であることが明らかにされている。
今回の調査地点は、綾瀬川から入り込んだ溺れ谷に面する標高8~12mの斜面地に立地する。検出された遺構は土壙24基、溝跡3条である。土壙は円形や楕円形のものが多い。出土遺物から古墳時代前期、平安時代、中世の所産と考えられる。溝跡は出土遺物がなく時期不明であるが、土壙との重複関係から平安時代に遡る可能性が考えられる。出土遺物は、縄文土器、土師器、須恵器、陶器などがある。縄文土器は、早期の押型文系土器、条痕文系土器、中期の勝坂式土器などが見られ、この地域で人々が長い間生活していたことを窺わせる。古墳時代前期の遺物は、土師器壺、小型壺、高坏、甕、台付甕などが出土した。平安時代の遺物は、須恵器坏、甕、ロクロ土師器坏がある。このうちロクロ土師器は、近隣で生産されたものと考えられる。中世の遺物は、常滑産の甕が出土した。
今回の調査地点は、居住にはあまり適していない斜面地に立地しているため、遺構の分布は全体に希薄であった。しかし、集落の全体像を復元する上では、台地上の平坦地に広がる居住域周辺の土地利用のあり方も重要な情報を提供している。

発掘成果一覧 >