EXCAVATION RESULTS発掘成果
【445集】大木戸遺跡Ⅳ

市町村さいたま市
主な時代縄文・古墳・平安・近世
発行年度2018
大木戸遺跡は大宮台地の西縁、滝沼川左岸の台地上を中心に営まれた旧石器時代から近世にかけての複合遺跡である。大木戸遺跡の調査は、昭和61年に一般国道16号バイパスの建設に伴いさいたま市(当時大宮市)が発掘調査を実施したのを端緒とし、その後、大宮西部特定土地区画整理事業に伴い、当事業団が平成12年度から継続的に調査を実施してきた。本書は、第6・10~17・19・21次調査の報告書である。
今回の調査では、旧石器時代の遺構・遺物は第16次調査でナイフ形石器が出土したにすぎなかったが、これまでの調査成果によると、大宮台地では発見例の少ない、後期旧石器地時代前半の石器群がまとまって出土し、近隣の清河寺前原遺跡とともに大宮台地に最初に足跡を残した人々の生活の様子が明らかにされている。
縄文時代では、早期の炉跡が第15・17・21次調査区で検出されている。遺跡範囲内には、中期末葉から後期初頭と後期の集落が、地点を違えて、台地縁辺部の東縁と西縁を中心に営まれていることが明らかにされている。中期末葉から後期初頭の集落では、第13次調査D区で検出されている柄鏡形住居跡が特徴的である。後期集落では、滝沼川を見おろす台地西縁を中心に、これまでに35軒の住居跡が検出されており、集落下の低地の第18・20次調査区の成果や、今回報告する低地と台地を結ぶ斜面地の第15・16地点の成果から、当時の人々の土地利用のあり方や集落景観を復元できるようになった。
古墳時代では、第6・17・21次調査区で前期初頭を中心とする住居跡が検出され、遺跡範囲の西側台地上に複数の住居群が広範に展開している様相が明らかとなった。第13地点で検出された方形周溝墓群との関連性が注目される。
近世では、各調査区から掘立柱建物や土壙、井戸跡、溝跡などの遺構や遺物が検出されている。このうち第21次調査C区では炉跡を伴う掘立柱建物跡が検出されているほか、第21次調査A区では井戸跡に17世紀前半の陶磁器や土器がまとまって廃棄されていた。また、台地のやや奥まった平坦な場所にあたる第10~13次調査区では、屋敷地周辺に溝で方形に区画された空間が広がり、畝跡から畠などの耕作地が広がっている景観が明らかになった。