EXCAVATION RESULTS発掘成果

【456集】栗橋宿跡Ⅲ

栗橋宿跡Ⅲ

市町村久喜市

主な時代近世

発行年度2019

栗橋宿跡は利根川右岸に立地する日光道中の宿場「栗橋宿」の町屋跡である。発掘調査は19世紀前葉~中葉の遺構を中心とする第一面と、18世紀以前の遺構を中心とする第二面で実施した。
調査の結果、第一面では町屋の裏空間に立ち並ぶ土蔵跡と考えられる建物跡群とそれらに付随する敷地境と考えられる杭列、溝跡が検出されたが、第二面では明確な敷地境は検出されなかった。敷地の境と江戸期の絵図は概ね対応していた。また、第203号建物跡に伴って、船材を転用した「木製桝形穴蔵」がほぼ完全な状態で検出された。県内では、初事例である。
第117・118号土壙及びグリッド出土の陶磁器には、「トラヤ」あるいは「とらや」と釘書きが施されたものが多数あり、「とらや」と直接染付を施した注文生産品も見られた。「虎屋」とは、栗橋宿西本陣跡に比定される脇本陣の屋号として知られている。第117・118号土壙から出土した木製品には「栗橋宿とらや運平様行」の墨書資料があり、江戸期の絵図に見える住人と一致した。これらの出土遺物により、脇本陣の他に「虎屋」を名乗っていた住人がいたことが明らかとなった。
遺物では、僅かなヨーロッパ産、中国産陶磁器類に加え、組物を中心とする国産陶磁器が多く検出された。土器類では、江戸で生産されたものが少数見られた他、江戸のものとは異なる在地の製品が多く認められた。加えて、常陸地域の製品が僅かに見られ、特に葉茶壺形土器は江戸・常陸地域外で初めて確認された。土壙を中心に出土した多種多様な一括遺物は、近世宿場町の実態を示す良好な資料と位置づけることができる。

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