EXCAVATION RESULTS発掘成果
【458集】栗橋宿跡Ⅳ

市町村加須市
主な時代近世
発行年度2019
栗橋宿跡は利根川右岸に立地する日光道中の宿場である。栗橋宿跡の調査は第1から9地点に分けて実施しており、第7地点は調査範囲内の南部に位置する。
第7地点の発掘調査では栗橋宿の町屋部分が検出された。19世紀中葉の遺構を中心とする第一面と、18世紀末から19世紀前半の遺構を中心とする第二面で実施した。
調査の結果、第一面では町家の敷地境と考えられる杭列・溝跡が検出された。溝跡は杭と板材で壁面を土留めする構造を持っていた。杭列・溝跡で区切られた敷地には、土蔵と考えられる建物跡と多数の土壙が検出された。土壙の中には火災の後片付けに関わる遺構があり、出土遺物のほとんどが被熱していた。第二面でも調査区南半から溝跡が検出されたが、第一面のような構造はなかった。
第二面の土壙からは信楽系陶器の葉茶壺が出土した。同じ土壙から見つかった「油屋幸七殿行」「茶四升」と書かれた木札や、江戸期の絵図にある「茶屋」「幸七」との関係が考えられる。
文字資料では「枡屋儀兵衛」の名が書かれた木札が多数出土した。絵図にある「乾物屋」「儀兵衛」との関連が推定され、「弁柄」「梅干」などを取引していた様子がうかがわれる。
土壙を中心に出土した多種多様な一括遺物は、近世宿場町の実態を示す良好な資料群と位置付けることができる。