EXCAVATION RESULTS発掘成果

【460集】栗橋宿本陣跡Ⅱ

栗橋宿本陣跡Ⅱ

市町村久喜市

主な時代近世

発行年度2020

栗橋宿本陣跡は、利根川右岸に立地する日光道中の宿場「栗橋宿」の本陣跡と町屋を含む遺跡である。発掘調査は19世紀前半の遺構を中心とする第一面と、18世紀以前の遺構を中心とする第二面で実施した。本書には遺跡北側の本陣敷地推定地における調査成果を集録する。
第一面では敷地境と考えられる杭列や溝跡が検出された。調査区東側が本陣の敷地で、建物跡の一部も検出された。他方、日光道中に沿った調査区西側は町屋の様相であり、近世の絵図と照合すると、本陣の店子が使用した空間と考えられる。第二面では敷地境がはっきりしないが、遺構の粗密から第一面と同じような空間利用が想定される。『栗橋宿本陣跡Ⅰ』で扱った南側の町屋範囲との境には、大規模な溝跡が重複して確認された。
調査区では、広域にわたり焼土層と火災処理に係る土壙が検出された。陶磁器の遺構間接合が顕著で、一部は文化・文政期の大火に伴うと考えられる。組物の陶磁器が複数出土した土壙があり、その様相や文献史料から、本陣で保管していた陶磁器が被熱・廃棄されたものと推定される。陶磁器では中国清朝磁器や色絵鍋島の皿も出土しており、本陣の備品を窺い知ることができる。
古期の遺構では、17世紀中葉頃の遺構が2基検出された。いずれも多量のかわらけを伴う遺構で、初期の本陣に関わる可能性がある。しかし、大多数の遺構は、18世紀半ば以降のもので、17世紀後半は遺構の空白期間となる。この間、栗橋宿を襲った寛保の洪水との関連も含めて、宿場町の形成・展開を考える上での大きな課題を残した。

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