EXCAVATION RESULTS発掘成果
【461集】長竹遺跡Ⅳ

市町村加須市
主な時代縄文
発行年度2020
長竹遺跡は利根川沿いの埋没台地上に立地する、縄文時代から近世にわたる複合遺跡である。本書は縄文時代後期から晩期にかけて形成された南北環状盛土遺構のうち、南盛土内から出土した遺構に属さない遺物に関しての報告である。
南盛土では後期から晩期にかけての住居跡29軒、掘立柱建物跡3棟、柱穴列3基、土壙68基の他に、埋甕3基、焼土跡25基、遺物集中6箇所と1293基という夥しい数のピットが検出されている。これらの遺構や遺構に伴う遺物に関しては既報告(「長竹遺跡Ⅱ」)であるが、それ以外の帰属遺構の判明しない遺物や、いわゆる包含層からの遺物が大量に出土している。多数の焼土跡や遺物集中箇所、ピット群が存在することから、調査時に把握しきれなかった住居跡等の遺構が相当数存在することが想定される。今回の報告では、それらを補うことも目的とし、遺物の出土位置(小グリッド単位)と数量、層位についても考慮して資料化した。
遺物は日常生活で使用されていた膨大な量の土器類、石器類、骨角器類、祭祀的な遺物である土偶・石棒や、装飾品としての耳飾りなどが出土している。また、土製円盤として分類した加工痕のある土製品は、用途不明であるが多量に出土しており、本遺跡の特徴的な遺物の一つとなっている。土器群では、特に遺構の検出が困難であった時期の晩期中葉安行3c式から3d式の良好な土器群と共に、並行期である東北地方大洞C1式、C2式、北関東地方の天神原式、東関東地方の前浦式、関西地方の滋賀里式などが出土しており、広域的な交流関係が把握された。石器では特殊な形の砥石や大型磨製石斧、局部磨製石鏃の出土等が特筆されよう。