EXCAVATION RESULTS発掘成果
【463集】栗橋宿跡Ⅴ
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市町村加須市
主な時代近世
発行年度2020
栗橋宿跡は利根川右岸に立地する日光道中の宿場「栗橋宿」の町屋跡である。栗橋宿跡の調査は第1から9地点に分けて実施しており、第5地点は調査範囲の北端に位置する。調査区の北半分は、北二丁目陣屋跡を一部含む。調査区の南半分は栗橋宿本陣跡に含まれ、本陣跡第5次として調査した。発掘調査は19世紀前葉~中葉の遺構を中心とする第一面と、18世紀以前の遺構を中心とする第二面で実施した。
調査の結果、第一面では町屋の建物跡、敷地境とみられる杭列・木樋、日光道中の一部とみられる道路跡が検出された。道路跡は東西に走行し、南北を木樋で区切られていた。木樋は杭と板材で壁面を土留めする構造を持ち、一部は木桶と木枡が付属する。木樋は複数が並行して確認され、また路面では複数の硬化面が確認されたことから、補修と整地が繰り返されていたと考えられる。道路に面した建物跡は土蔵のような重量物を支持する基礎構造は持たず、礎石が並べられているだけのものと捨杭がうたれているものがあった。第一面・第二面とも土壙の中には火災の後片付けに関わる遺構があり、陶磁器類のほか角材や瓦などの建築部材が被熱した状態で出土した。
遺物では、土壙から「天狐」とみられる木製神楽面が出土した。面が発掘調査によって出土した事例は少ない。また日光道中を遺構として調査した例はなく、どのように使用されていたかを示す貴重な資料が得られた。このほか土壙を中心に出土した多種多様な一括遺物は、近世宿場町の実態を示す良好な資料群である。