EXCAVATION RESULTS発掘成果

【466集】上宿遺跡

上宿遺跡

市町村志木市

主な時代古代・中近世

発行年度2021

上宿遺跡は、武蔵野台地の縁辺を縫うように流れる新河岸川の自然堤防上に立地する平安時代から近世にわたる遺跡である。発掘調査の結果、平安時代の住居跡や土壙、井戸跡、溝跡が検出され、9世紀中頃から低地にも集落が進出していた様相が明らかになった。この時期は、台地上における集落も数や規模を拡大する時期に符合しており、集落動態を考える上でも重要である。出土遺物には、県内の南比企窯跡群や東金子窯跡群で生産された須恵器だけでなく、愛知県猿投窯跡群産の灰釉陶器なども含まれていることから、河川交通に密接に結びつく低地の集落の性格を窺わせる。
中世では、薬研堀をめぐらした空間に、井戸跡や土壙、多数の柱穴が検出された。出土遺物から16世紀後半には屋敷地の成立が想定され、この時期に低地部の開発が本格化したことを物語っている。溝跡や井戸跡には二次利用された板碑が廃棄されており、周辺に宗教的空間が存在していたことを示し、文献にみえる『宗岡宿』の様相を知ることのできる貴重な成果が得られた。
近世では、大規模な溝跡や井戸跡、土壙などが検出されたほか、近傍に所在する千光寺に関連する墓壙群が検出され、寛永通寳による六道銭を副葬した土壙墓がみつかっている。中でも、精巧に作られた飯事道具を副葬した土壙墓は、近世から近代にかけての葬送に関わる習俗を知るうえで興味深い事例である。

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