EXCAVATION RESULTS発掘成果

【473集】栗橋宿跡Ⅵ

栗橋宿跡Ⅵ

市町村久喜市

主な時代近世

発行年度2022

栗橋宿跡は利根川右岸に立地する日光道中7番目の宿場街「栗橋宿」の町屋跡である。発掘調査で検出された遺構は19世紀後半以降を中心とする第一面、18世後半~19世紀前半の遺構を中心とする第二面、18世紀前半以前を中心とする第三面に分けられる。
調査の結果、第一面では町屋の裏空間に立ち並ぶ土蔵跡と考えられる建物跡とそれらに平行する敷地境と考えられる杭列、溝跡、木樋が検出された。第3・7・8号埋設桶は自然科学分析の結果、便槽としての機能が示唆された。第二面では建物跡が少ない一方で、井戸跡や土壙が多く、第一面とは土地利用が異なっている。第三面では浅間A降下軽石に被覆されている畠跡が検出された。また、多量の羽口や鉄滓が出土し、小鍛冶遺構が検出されたことから鍛冶屋の存在が示唆された。調査区南側では、18世紀前葉に比定される火災層とその直下から18世紀初頭の土壙が検出された。また、18世紀前葉に遡る火災処理土壙が検出され、栗橋宿跡最古級の火災痕跡が認められた。
遺物では、僅かなヨーロッパ産、中国産陶磁器類に加え、国産陶磁器が多く検出された。土器類では、江戸で生産されたものがみられたほか、江戸のものとは異なる在地の製品が多く認められた。加えて、18世紀の遺構からは常陸地域の製品が一定量見られ、大甕や火鉢、が確認された。土壙を中心に出土した多種多様な一括遺物は、近世宿場町の実態を示す良好な資料であり、特に18世紀前葉以前の遺構群から出土した遺物は栗橋宿跡の空白期間を埋める貴重な資料となった。

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