EXCAVATION RESULTS発掘成果

【482集】栗橋宿跡Ⅷ

栗橋宿跡Ⅷ

市町村久喜市

主な時代近世

発行年度2024

栗橋宿跡は、利根川右岸に立地する日光道中7番目の宿駅「栗橋宿」を中心に形成された宿場跡である。遺跡は日光道中の東西に短冊形に延びる町屋の集合を以って形成されている。本報告書に収録した第9地点は、宿場のほぼ中央にあたり、日光道中から東に分岐して土手側の鍛冶町、船戸町へと通じる「往来道」を含む範囲である。
発掘調査は2面に分けて段階的に実施した。このうち、19 世紀前葉以降を中心とする第一面調査の大半は既刊の第474 集で報告し、本書では、主に18 世紀後葉から19 世紀前葉を中心とする第二面の調査成果を主に収録した。
調査の結果、第一面では現代の町割りに重なる地境溝および区画内に収まる建物遺構、土壙群等を検出した。第二面では、明確な土地区分を示す遺構は検出されなかったが、街道の軸線に沿った方形土壙が多数検出された。また、道路跡、井戸跡・溝跡の一部は第一面・第二面にまたがる遺構であることが確認された。
第二面の検出遺構は土壙が主体であった。その多くは、生活上の不要物、また火災、洪水などの災害に伴う塵芥廃棄の土壙であった。このうち方形・長方形の平面プランを有する土壙の多くは、災害時の片付け土壙であったと考えられ、街道の軸線に平行あるいは直交する軸線をもって掘られている。遺構からは陶磁器をはじめ、多種多様の木製品、金属製品などの生活材に加え、瓦、葺き屋根材、壁土や板材などの建材も多く出土した。
その他、特筆すべき遺構として、水害の痕跡を示す遺構が検出された。第414 号土壙は、調査区の西から東に向けて広がる不整形の浅い土壙として検出したが、遺物の出土状況と堆積土の観察から、街道側から土手側に向けて、破損した家屋の部材や生活材を巻き込んで土砂混じりの土砂が流入した痕跡であると推察された。 

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